PINKY! × chloma × TOKIYA
作詞 - 七菜(Make Flow, Inc.) / 作曲 - 森健一 / 編曲 - 小澤正澄
ジャンル R&B/AOR
BPM 113
○どんな曲?
初出はDCD2弾。 最初期から存在するR&Bチューンで、歌唱担当はSTAR☆ANISのわか氏、ふうり氏、すなお氏。ベストアルバム収録のバージョンはすなお氏ソロであること、DCDでのTrap of Loveのステージ属性がSPYCY AGEHAであることから紫吹蘭の持ち歌としてのイメージが強い一曲だが、アニメ初出は8話「地下の太陽」のヒカリが練習をしているシーン、ステージ初出は13話「カロリーの悲劇」で、こちらはなんといちごソロとして披露されている。1期最初は「持ち歌」という概念をあまり意識させない構成だったのを改めて思い出す逸話ではある。紫吹ソロのステージで初めて使われたのは57話「ゆるキャ蘭ウェイ!」、2年越しの披露となった。
○インプレッション
この曲はおおむねR&Bであるが、もともとR&B自体が非常に幅の広いジャンルである事、そして曲にAORの要素が含まれていることから、この2つのジャンルが複合したものとして考えていきたい。
R&Bという単語が生まれたのは40年代後半であるという。それまではJAZZ、ブルースやゴスペルも含め、アフロアメリカンの音楽はすべて「レイスミュージック(Race、つまり肌の色)」と呼ばれていたものが、白人音楽と黒人音楽が混ざり合うこと、そして黒人が権利を獲得していく過程で変化した行ったものだ。歴史の長いジャンルであるからその内容も年を追うごとに変化していく。R&BからSOULが派生したり、ヨーロッパに波及したり、何よりROCKもここから生まれた。それらの派生ジャンルからの要素の逆輸入によって音を変化させながら、R&Bは今もブラックミュージックの一角に存在し続けている。
前述の通り歴史が長く派生も多いジャンルなので、この曲を単純にR&Bと定義して似たky候を探そうとするとその曲のプールの深さに途方に暮れることになる。なので、個人的な判断にて申し訳ないのだが、ここでは80年代前半「ブラックコンテンポラリー」と呼ばれた時代のR&Bとして扱いたい。
もともとR&Bは黒人音楽である。言うまでもなくアメリカは白人と黒人の断絶が社会問題として根強かったし、そのせいもあるのか、黒人音楽を白人が聞く(もしくはその逆)ことは当時は稀なことだったそうだ。それが、70年代になると白人音楽(ロックンロールは白人音楽とよく言われる。R&Bが源流にあるのにもかかわらず)と黒人音楽のクロスオーヴァーが起きる。黒人としての感情の発露であったR&Bに、白人音楽特有のクールさ…クールさと言ってしまうとまるで黒人が知的ではないかのように聞こえるかもしれないが、あくまで音楽のつくりとして、という意味だが…が混ざりこみ、より大衆的な形に姿を変えていった。特に80年代前半のこうしたR&Bは「ブラック・コンテンポラリー」と呼ばれることが多く、多くのバラードナンバーが作られた。90年代に入るとこの呼ばれ方は消滅することになるのだが、呼び方が元のR&Bに戻っただけで音の作り方は現代まで続いている。
次に、AORについて触れる。音楽ジャンルとしてのAORは時期によって定義が異なり、ここでは日本において80年代中盤に"Adult-oriented Rock"として紹介されたそれについて触れる。乱暴に説明すると、ロックに対してjazzやフュージョンの要素を盛り込んだ、イージーリスニングとしてのロックである。特に90年代前半のJ-popシーンにおいて、ビーイングや小室哲也がブイブイ言わせていた裏で、より高年齢層に向けてリリースが活発だった。特に、これらの影響下にある女性シンガーにおいては「フォークソングの時代」と、その後「宇多田ヒカル以降のよりR&B的な歌い方が支配的な時代」の中間を埋めるような曲が多数存在する。個人的には、特にバラードを得意とする女性アーティストが多数このジャンルから排出されたように感じている。
曲こそR&Bなのだが、歌い方はあくまで日本の楽曲。曲と歌い方で異なる2つのジャンル要素を併せ持ったのがTrap of Loveという曲だといえるのだ。
○Trap of Loveから、何を聞く?
Coco d'Or/“just the two of us”
R&BとFUSIONを合わせたジャンル、smooth jazzのオリジネーター、Grover Washington Jr.による81年の曲。
35年たってなおR&Bの絶対的なアンセムとして君臨するこの曲はそれこそ星の数ほどカヴァーされ星の数ほどサンプリングされた名曲中の名曲である。日本人でも久保田利信がカヴァーしたり最近では EXILEのメンバーがカヴァーしたりしていた。動画はSpeedの島袋寛子のユニット、Coco d'Orによるカヴァー。もともと男性ヴォーカルによる曲だが、女性がカヴァーしても映える。世代を超えたアンセムとはえてしてそういう物であろう。
古内東子/“purple”
90年代中盤には日本のAORはひと段落していたように思うが、その中でチャートの上位に食い込んでいた存在が古内東子である。歌謡曲とR&Bのいいところをとったような歌い方が心地よい。恋の歌をバラードで歌いあげるそのスタイルは「恋愛の教祖」と呼ばれたほど。この古内東子もまた、R&BとAORの要素をあわせもっているといえる。○近い曲を、どうやって探す?
80年代前半にリリースされたR&B、もしくはブラックコンテンポラリーをキーワードにするか、日本の80年代-90年代中盤のAORを探すとよい。
